続・だらだら山歩き

新聞 東之川 2018.3


先日、「愛媛の新聞100年」というのを発見しまして。
つらつら読んでいたら、石鎚学術調査当時の記事を発見。その内に東之川について書かれていました。
ちなみに冊子の方には東之川としてのこの考察は確認出来ませんでした。




関連本分全文

急激に増える造林地
 明らかにされる部落形態
【東之川で和田(重)記者】石鎚山系総合学術調査団地理民族班のBパーティー、
相馬教授、国田教諭の一行は二十日午後、予定通り西条市の最南端、東之川部落に
到着、部落に残っている古記録、古老の話し、実地観察などにより、主として明治
以降、同部落から他地域への人口流出、農業から他産業への転化に関係する村落構
造の変ぼう、土地利用の変化などについて調査したが、これは地理学上からいって、
山村生活の近代化の家庭を研究する点で重要な研究資料となり、同部落の場合、比
較的、外部の林業資本に従属しないで、林野が保持され、しかも部落内の独立資本
で木材加工工業が芽生えている点が注目された。加茂川支流の谷間沿いに開けた同
部落は、明治年間新居群東之川山村と呼ばれ、山々には焼畑造林が分布、川沿いの
斜面に石を積み、その上に屋根も壁も総板作りの家が点在、見るからに林業地らし
い部落の様子を示している。現在部落長をしている工藤森蔵さん(五三)宅に所蔵
されている戸籍簿、反別畝順帳などの古記録をみると、明治四十四年六十四戸、大
正十年五十戸、現在二十七戸と順次、人口流出がめだっている。これは比較的早く
開けた瀬戸内平野に新しい労働市場を見出して部落内の貧しい人が出ていったもの
とみられるが、その場合、土地が部落外の人手に渡ることが少なく、そのまま村内
の有力者に売却され、村内に保持されていることは将来村が伸びてゆくためにもよ
い結果をもたらせている。高知県の本川村でも人工流出がめだっているが、同村の
場合、土地がほとんど外部資本に渡ったため壊滅した部落があるのにくらべると対
照的である。
部落に林業が導入されたのは明治二十年代で、同二十七年には地目変換の届出が多
く、畑地から林地への交換がめだっているこれに関連して交通機関の発達道路の整
備などを待って林業が導入された他地域にくらべ、東之川では加茂川沿いに丸太を
流送、引板は担夫が搬送していたこともこの部落の特徴である。このような林業資
本による影響は別子山以西四国山脈の北側にある山によく現れているが、反面同村
が明治、昭和を通じて農業、林業経営面で焼畑にかなりの依存度を持っていたこと
も面白い。昭和に入って、部落の有力者間に林業請負業をいとなむ者ができ、他資
本に従属する林業労務者が増加 明治末期から瓶ヶ森鉱山の開鉱で鉱山労働者など
もふえ、賃金生活という都会的な生活形態がとられるようになってから次第に焼畑
が衰退して行った。現在、部落に残っている焼畑は約十町歩、しかも造林を主体と
している。焼畑は土地のよいところで三年間アズキ、ヒエ、ジャガイモなどが作ら
れるが、土地の悪いところでは畑にしないでそのまま造林されるところもあり、
零細地主までが造林に参加、とくに昭和二十四、五年行こう急激に造林がふえてき
ている。そのうち、他資本に依存した林業請負者が、次第に木材加工を部落内で始
めるようになり、村内資本による村の企業として近代設備による加工業が芽生え、
多少の貧富はあるが部落全体が一つの経済圏を形成して、部落全体の生活をうるお
している。これは、土地を他資本に渡さず、着実に土地利用をつづけてきた村の人
の用心深い生活態度がむくわれたものである。加茂川の上流はちょうど四国山脈の
北壁にあたり日本でも大規模な断層崖で、見渡すところ、キリのような山がそびえ、
いたるところに自然のナタでざっくり割られたような断崖を見る。一度、大雨でも
あれば上流はたちまちにして急濁流となり、岩をくだくようなはげしさで流れる。
急なトイを流れるような水で木材を流送した山の男の話や、遠く土佐川の白猪谷の
鉱山から二つ、三つの銅塊を背負って海抜千四百メートルのシラザ峠を越えて西之
川までおりてきたという山の女の話は四国山脈の断崖に点在する山村の生活の厳し
さと貧しさを物語っている。

愛媛新聞 昭和33年7月22日

手元の別の資料で瓶ヶ森鉱山は昭和15年頃が最盛期であったとあり、索道を用いて
前田峠を越えて出荷していたとある。
となると、地元の住民としては焼畑と林業が主産業であったという事でいい様に思
える。
たかだか120年程で山の中はかくも大きく動いたというわけで。


ちなみにこの新聞記事の日、大江健三郎氏が芥川賞を受賞としてピックアップされてい
ました。死者の奢りは読んだことあるはずだけど、内子町出身だったんですね!


個人的にツボだったのはこれ。
最近○○ファーストと聞くとなんとなくざらざらするものがあったのだが


なるほど、コレが出典であれば許す(ぜったいに違う

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